2008年 10月 5日
準決勝でガスケとの接戦を制し勝ち上がってきたデルポトロと、ロディックを逆転で下したベルディハ。デルポトロ198cm、ベルディハ195cmと長身を利したスケールの大きなテニスが持ち味の両選手。世界トップクラスのテニスを見ようと、有明コロシアムに詰め掛けた観客の期待が高まった。ところが、コンディションに変調をきたしたデルポトロは著しくプレーに精彩を欠いてしまう。一方、準決勝で逆転勝ちした勢いをそのままに決勝に乗り込んだベルディハ。あまりにも好対照な2人のプレーがスコアにそのまま反映する結果となった。
立ち上がりは互角だった。第3ゲームまではキープが続く。ところが第4ゲームあたりから主導権がベルディハに大きく傾き始める。ベルディハはリターンゲームでも好プレーを連発。ベースラインを深くついたリターンからデルポトロの浅い返球を逃さずハードヒット。このパターンが何度も決まり、第4、第6ゲームを連続でブレークし、第1セットを6−1で先取。23分というあまりにもあっけない展開に、スタンドからは「デルポトロ、頑張れー!」の声援が起きた。
デルポトロは明らかにおかしかった。第1セット第5ゲーム後のチェンジエンドでは無断でコートを去り、遅延行為のコードバイオレーションを取られてしまう。試合後、「朝から腹痛に襲われていた」と打ち明けた。「薬を飲んだことで第1セット終了時には楽になった」そうだが、満身創痍の体はとても戦える状態ではなかった。
一方、好調のベルディハはますますペースを上げていく。第2セット、自らのサービスゲームではエースを連発。3ゲーム連続ラブゲームでのキープに、スタンドからは感嘆の声がもれた。終盤やや盛り返したデルポトロだったが、好調のベルディハを崩すには至らず6−4でゲームセット。
「今日はサーブの調子が良かった。僕はサーブから試合を組み立てるタイプなので、サーブが良いと必然的に他のショットも決まり始める。今回は非常に良い状態でトーナメントを過ごすことが出来た」と勝因を述べたベルディハ。「今のテニス界では少しのきっかけで調子が上がったり下がったりする。この優勝をきっかけに、再度トップ10入りを目指したい」と今後に向けての大きなモチベーションとなるAIGオープン初栄冠だった。
日本テニス協会広報委員会委員・フリーライター 成瀬悦朗