2008年 10月 4日
2時間4分の試合は、数字以上のクロスゲームだった。今年の大会のベストマッチとして記憶されるかもしれない。1メートル98の長身から打ち下ろすビッグサーブと力強いストロークのデルポトロ。多彩な技術を駆使し、意表を突くプレーで相手を翻弄するガスケ。2人が持ち味を存分に発揮した最終セットは息詰まる展開となって、ゲームの流れが両者の間を行き来した。
「疲れた。彼は本当にタフなプレーヤーだ。勝ててよかった」。試合後のデルポトロの第一声だ。最終セットは何度もピンチがあった。第3ゲーム。ガスケのスライスをミスして招いたこのセット最初のサービスダウンのピンチは、ネットに出る攻めのプレーでしのいだ。5−5で迎えた第11ゲームは、2連続のダブルフォールトで15−40としてしまった。ここではファーストサーブを連続で入れて相手の勢いを押し返すと、その後もガスケのリターンに苦しめられたが、最後は191キロのサービスエースで何とかこのゲームをキープした。「とにかく頑張れば、どこかでチャンスが来ると言い聞かせてプレーしていた」とデルポトロが振り返った。
チャンスとピンチが交互に来るのが勝負の常。これで流れが変わる。「疲れていたし、イライラもしていた」というガスケが、続く第12ゲームで緊張の糸が切れたように、簡単なショットでミスを連発して幕切れはあっけなく訪れた。どちらが勝ってもおかしくない試合は、デルポトロが「勝った」というより、ガスケの攻めをしのいで「負けなかった」という内容だった。パワーテニスが身上の20歳が、メンタル面の強さを見せた一戦ともいえた。
7月のシュツットガルト(ドイツ)から4大会に優勝。全米では準々決勝でマリー(英国)に敗れたが、その後もデ杯のロシア戦でダビデンコらを連破して、ここ3か月は絶好調を持続している。「(今の好調さは)もちろん当たり前のことではないよ。でも、メンタル、ゲーム内容、全てを変えようと努力して、こういう結果につながった」とデルポトロは胸を張る。「今の彼はトップ5に入る。フェデラー(スイス)、ナダル(スペイン)、ジョコビッチ(セルビア)、マリーに続く選手だ」。敗れたガスケの言葉にうなずくしかない。
谷 祐一