2008年 10月 1日
ATPランキングこそ格下の錦織だが、赤丸急上昇中の若武者には一切関係なかった。錦織は、フェデラーも一目置くその才能を遺憾なく発揮していく。粘り強いストロークが持ち味のガルシアロペスだが、錦織の前ではその武器さえかすんでしまう。それほど彼のプレーは多彩であり、配球は18歳とは思えぬほど巧みだった。
大歓声の中、始まった試合は第1ゲームから見せ場を迎える。14回のデュース、22分間にも及ぶロングゲーム。「途中あきらめようかとも思ったが、こういうゲームを取るか取らないかで試合の流れが決まってくるので意地でも取ろうと思った」。試合のツボを心得ている錦織が、このゲームをもぎ取った。その後も打ち気にはやるガルシアロペスに対して、あるときにはスライスでいなし、あるときは深いトップスピンで相手のペースを乱す。もちろん、強烈なフラットドライブがダウンザラインやクロスコートに突き刺さった。コートの広さを目一杯利用した、変幻自在な錦織のプレーが相手を翻弄する。第5ゲームもブレークして一気に5−1。その後、相手に3ゲームを連続して取られるものの第1セットは6−4で錦織が先取した。
続く第2セットも錦織のペースは変わらない。第8ゲームまではキープ合戦が続いたものの第9ゲームを錦織がブレーク。結局これが決め手となり6−4。ストレート勝ちで錦織が3回戦進出を果たした。
次の相手は第4シードのリシャール・ガスケ(フランス)。「やってみたかった選手なので、勝敗を気にすることなく楽しみたい。相手を振り回してチャンスがあれば前に出ていくつもり」と抱負を口にした錦織。相手がトッププロだろうと気後れするそぶりはまったくない。日本とフランスの「天才対決」から目が離せなくなってきた。
日本テニス協会広報委員会委員・フリーライター 成瀬悦朗