2008年 9月29日
前週の韓国オープンで1年2カ月ぶりにツアー復帰。予選でうれしい1勝を挙げた不田涼子が、このAIGオープンでは勝ち星を3つ重ね、初の本戦入りを果たした。右ひざのケガで2度の手術。故障の前と今で最も大きく変わったのは「気持ち」だという。高い集中力と冷静さを保ち、積極的なプレーで確実にポイントを重ねていく。バックハンドが得意の不田だが、威力と精度が向上したフォアハンドでウイナーを奪う場面も目立った。相手が腰を痛めて途中棄権という結果になったが、「自分のペースでできた」と言うように、ゲームは不田が常に支配した。
試合を終え、坂本正秀コーチの元に歩み寄る不田の目から涙がこぼれる。記者会見では「戻ってこられたことがうれしい。ツアーを離れて1年と少し。長かった、というのが正直なところ。いろいろあったけれど、やってきてよかった」と語った。しかし、その表情はもう、冷静さを取り戻している。復帰の喜びは、涙を区切りに一度封印したのだろう。ここがスタート、という意気込みがその表情に表れていた。
日本テニス協会広報委員会委員・フリーライター 秋山 英宏