2007年10月 1日
主催者推薦での出場だが、日本男子の最年少でツアー8強入りし(7月、米国インディアナポリス)、先月の北京のツアー大会でも予選を上がった実力の持ち主。それでも国内の大会は久しぶり。「緊張して試合前はかたまっていた」と言うが、ゲームが始まるとそんな様子はまったく感じさせなかった。相手は世界141位の27歳。「チャンスはある」という錦織の言葉通り、どちらに転んでもおかしくない展開だった。第1セット。先に相手のサーブをブレークしたのは錦織だった。だが、次のゲームで3本のダブルフォールトをおかし、3−3に追いつかれる。「気を抜いてしまった。よくあることなのでこれから引き締めたい」と振り返った。
タイブレークは5−2から逆転されて落としたが、第2セットは錦織の強さを存分に発揮。自らが「武器」だと語る重いスピンのかかったフォアハンドがうなりをあげた。「何でもできるのでフェデラーが好き」と言うが、その言葉は錦織にも当てはまる。左右に振られてもまったく体の軸がぶれず、強打もやわらかいタッチのネットプレーもお手の物。フェデラーやナダルの練習相手も経験し、トップのテニスを肌で感じてきた錦織が6−3でセットを取り返す。
だが、第3セットはサーブから主導権を握れず、一方的な展開に。各セット間にメディカルタイムアウトを取り、腰の治療を受けたが「試合への影響はなかった」という。試合後の会見では「サーブをもう少し入れ、もう少し攻めていければ」と敗因を語ったが、「100位以内の選手と対等にやれて自信になった」と満足そう。大勢の報道陣に囲まれて驚きの表情を浮かべながらも「注目を浴びるのはうれしい」と笑顔で会見を締めくくった。
ほろ苦いデビュー戦となったが、まだスタートラインに立ったばかり。将来世界のトップと渡り合う予感を感じさせるプレーで観客を魅了した。
毎日新聞記者/元テニスプレーヤー 長野宏美